河村まなみさん/バイオラ大学、パサデナ短期大学/ピアノ科専任講師

上野学園中学校、高校、大学でピアノを専攻し、卒業後、公立中学校教諭を3年勤める。 その後ロサンゼルス近郊にあるバイオラ大学(Biola University Conservatory of Music)を経て、 メナヘム・プレスラー氏との出会いをきっかけにインディアナ大学(Indiana University Jacobs School of Music)ピアノ演奏科修士課程へ進む。 終了後、バイオラ大学音楽学部に専任講師として戻り、現在は米国やアジアでソリスト、アンサンブル奏者として演奏活動を続けると同時に、 バイオラ大学とパサデナ短期大学(Pasadena City College)で教鞭を取り、ピアノの個人レッスン、ピアノ科対象のクラス等を受け持つ。 生徒達は大小コンクールに優勝、入賞し、インディアナ大学、イーストマン音楽学校などのメジャーの音大、大学院への進学を果たしている。 -音楽留学の経緯を教えて頂けますか? 河村先生:音大卒業後、私は公立中学校教諭として働き始めたものの、もっとピアノを勉強したいと思っていました。ある日その頃行っていた教会の牧師に、 アメリカのバイオラ大学のピアノ科主任が来るので会いに行ってはと勧められ、その教会のアメリカ人教師からバイオラ大学は米国内のクリスチャンの総合大学の中でトップクラスの学校だと聞いたので、 その先生にお会いし、レッスンを受けました。レッスンの後、スカラシップをあげるからバイオラに来たらと誘って頂いたので、仕事を辞めて留学することにしました。 バイオラ大学の教会音楽科修士課程に編入するつもりでまずは大学入学を許可され、意気揚々と留学したら、行った途端に教会音楽科の閉鎖が決まってしまい、 仕方なく英語や音楽のクラスとレッスンを取りながら、次のステップを探すことにしました。 その2ヶ月後、ボザール・トリオの演奏会に行き、ピアニストのメナヘム・プレスラー氏に感激し、「彼が私の探していた理想のピアニスト。この人に習いたい!」という思いになりました。 その後私はプレスラー先生のマスタークラスでレッスンを受けることができ、先生に習いたい旨をお話ししたところ、 自分が教えているインディアナ大学に来れば教えましょうと言って下さったので、インディアナ大学を受験することにしました。 翌年インディアナ大学大学院に合格したましたが、先生につきたい学生達が世界中から来ていてウェイティング・リストがあったため、 私は一年間別の先生方に付きながら待って、次の夏から2年間先生に教えて頂きました。 -アメリカで音楽を学ぶ良い点、苦労する点などあったら教えて下さい。 河村先生:まず良い点ですが… •アメリカには大変多くの素晴らしい先生方がいらっしゃり、個人レッスンだけでなく、サマーフェスティバルやマスタークラスなどで世界中の多くの先生から教えて頂くチャンスがあります。 私も、もしアメリカに留学していなかったらプレスラー先生に巡り会うことはなかったので、アメリカに行って本当に良かったと思っています。 •アメリカは一般的に自立心を求められますが、音楽の上でも自分で考え表現するということを強く求められるので、 日本で築いた基盤の上にその訓練ができることで、一回り大きな演奏家になれるのではないでしょうか。 •世界の殆どの場所で通じる英語を使えるようになることも、将来の仕事のためには良いことではないでしょうか。 実際私はアメリカ国内だけでなく、シンガポールやインドネシアなどでも英語でレッスンやマスタークラスをさせて頂きました。 •アメリカは大変融通が利く国なので、高校を卒業していれば年齢に関係なく短大、 大学に入学でき、いつでも専門を変えることができ、自分に合ったスケジュールで勉強できます。 苦労する点は目的によって異なるかもしれません。 •もし学位取得を目指すなら、苦労する点は英語での勉強だと思います。 まずはどの学校を受験するにしてもTOEFL等の英語試験で規定以上の点数が必要になります。 大学から入ると一般教養も英語になりますから幅広い英語力が求められ、大学院から入ると音楽の授業だけですが、深い分析力と読み書きの力が求められます。 •ディプロマや演奏証書などの取得の場合は、学校によって違うものの、必須科目のクラスが少なくなり、 英語力の必要度は下がります。その代わり演奏会の回数が増える等の別の課題が増えます。 •サマーフェスティバルなどに参加する場合は以上のような規定はほぼありませんが、 英会話力が高ければ、それだけレッスンでの実りが多いと思います。 -アメリカに音楽留学することで最も重要なことはなんでしょうか? 河村先生:アメリカは学費が高いと思われがちですが、多くの音大、音楽学部はオーディション(受験の実技)の成績によって奨学金(返済なし)を出しますし、 最近はその額が上昇しています。また学校によっては学業成績による奨学金、留学生向けの奨学金などもあります。 私の生徒達も大学、大学院進学のどちらの場合も殆どが奨学金を頂き、中には授業料のほぼ全額を頂いた場合もあります。 また助手、伴奏者として働くポジションもあります。私の場合はインディアナ大学で助手として働かせて頂き、授業料は全額免除で、毎月アパートの家賃がカバーできるくらいのお給料を頂きました。 日本の学生さんは大変優秀な方達が大勢いらっしゃるので、奨学金を頂けるチャンスは大いにあるはずです。 しっかり準備をすれば難しいことではありません。具体的にどのような準備をすれば良いか、目的毎に以下に思いつくことを挙げてみました。 学士号、修士号、博士号取得を目的とする場合 •まずは英語の勉強をすること。TOEFLの勉強をしっかりして合格点以上を目指して下さい。 •同時にもちろん実技を磨きますが、志望校のオーディションの課題曲、受験の一次、二次審査の方法などを確認し、それに沿ったレパートリーを作っていきます。 学校によって課題曲や持ち時間などがだいぶ違うので、しっかりリサーチし、効果的な選曲をします。 また、最近では一次審査に録画を送ることが多いので、なるべく良い録画を提出するために計画的に準備する必要があります。 (録画の質によって合否は左右されます。) また2次試験に進めたら、録画よりライブ・オーディションをお勧めします。 私の生徒達が大学院を目指す場合は、2年くらいかけて、レパートリー作りから演奏会、マスタークラス、コンクール等を利用して演奏の経験を積み上げて準備します。 •志望校の決め方ですが、私は自分と自分の生徒達の経験から、学校よりはまず先生を選ぶことを心がけて指導しています。 どんなに有名な学校に入っても、合わない先生に教わってしまうと時間と労力の無駄になってしまうことがあるからです。 ですので、だいぶ早いうちから目指す先生に連絡を取ったり、マスタークラス、サマーフェスティバル等に参加して教えて頂いたりして、先生との相性を確認できるようにします。 そして、その先生が教えておられる学校を志望校とします。 ディプロマや演奏証書(Artist Diploma, Performance Certificateなど)取得を目的とする場合 •オーディションの規定によってレパートリーを準備する(上記参照) •TOEFLなどの英語の試験の有無、合格点等を調べて対応する。 •入学後のディプロマ取得に必要なクラスや演奏会などが自分に合っているか把握する。 •奨学金の有無を調べる。 短大から始める場合 •いきなり大学に入るのは不安なので少し簡単なところから始めてみたい、という方には州立短大(junior college)も良いかもしれません。 大学音楽学部1〜2年の音楽のクラスや一般教養を大学よりやや易しいレベルで終わらせ、大学に編入することができます。 •学費は大学より安いですが、殆どの場合奨学金はありません。音楽の留学生は大学から奨学金をもらうと短大より安くなる場合があります。 •学校によって個人レッスンの質とレベルにかなりのばらつきがありますので、注意が必要です。 •TOEFL等の英語試験、オーディションの方法などは学校によって違います。 サマーフェスティバル等に参加する場合 •有名な大規模フェスティバルだけでなく、高校生や大学生が参加しやすい中規模のフェスティバルも沢山あります。 先生方との出会い、英語でのレッスンなどを経験できて、本格的な留学を考える機会とできるでしょう。 •申し込み締切日、オーディションの規定、参加費等を調べる。(フェスティバルによっては前年の11月頃締め切りということもあります。) •フェスティバル内のコンクールに参加できるか調べる。 (多くのフェスティバルはコンチェルト・コンクールがあり、選ばれればオーケストラと一緒に演奏できます。曲目の規定や申し込み方法等、よく調べてください。) -海外で、特にアメリカで仕事をするにあたって、日本人が有利な点、不利な点というのはありますか? 河村先生:ロサンゼルスは人種のるつぼなので、人種による違いはあまり感じたことがありません。 -今後の音楽的な夢、目標などございましたら、聞かせていただけますか? 河村先生:今まで自分の仕事をこなしていくことで精一杯でしたが、さらに邁進していくと同時に、 今まで30年間積み上げてきた経験などを後輩の先生方や日本の学生さんを助けるために使えたらと思います。 -アメリカでプロの音楽家として活躍する秘訣、成功する条件はあるとお考えですか? 河村先生:アメリカでは、自分が所属する所に、自分が必要な人間なのだということを常に認め続けてもらう努力が必要だと思います。 そのためには自分の持ち味を発揮するように心がけることでしょうか。 自分の強みを自覚し、それを用いて小さい成功や貢献を積み重ねていくことが、息長く仕事していくコツかもしれません。 また日米の様々な違いを理解していると心の葛藤が起きづらいかもしれません。 例えば日本は新しいことを始めるのに時間をかけて完璧に準備してから動き出しますが、アメリカはとにかく始めてみて上手くいかない所を随時変えていく。 また日本は量より質、アメリカは質より量という傾向がある。日本は前例を重んじるが、アメリカは新しいアイデアが好き。 そして日本は失敗しないように気をつけるが、アメリカは尻込みしないように気をつける、などです。 もちろん勤勉で責任感があり、協力的であることはどこにいても重要です。 -海外で勉強したいと考えている読者にアドバイスをお願いします。 しっかりリサーチをして計画的に準備すれば留学は難しくないと思います。 良い準備をすればそれだけ成果が得られるはずです。ただ漠然と来てしまうと失敗する事もあるので気をつけて下さい。 -貴重なお話しをどうもありがとうございました。

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