大島莉紗さん/パリ・オペラ座/ヴァイオリン

大島莉紗さんプロフィール

大島莉紗 様(おおしまりさ) /パリ・オペラ座管弦楽団ヴァイオリン奏者

桐朋女子高等学校音楽科卒業後、桐朋学園大学ソリストディプロマコース修了。文化庁在外派遣研修員として英国王立音楽大学大学院に留学。同大学院を過去最高点の首席で修了。ドイツのオーケストラを経て、2003年パリ・オペラ座管弦楽団に入団。ソリスト・室内楽奏者としても多彩な活動を展開している。現在、パリ在住。

〈コンクール歴〉
パガニーニ国際コンクール[イタリア/1993年]
UNISA国際コンクール[南アフリカ/1996年]
エリザベート王妃国際音楽コンクール[ベルギー/1997年]
ロドルフォ・リピツァー賞ヴァイオリン・コンクール5位[イタリア/1999年]
ポスタッチーニ国際ヴァイオリンコンクールファイナリスト[イタリア/2002年]
ほか

 

-今までに海外で受験したコンクール名を教えていただけますか?
 
大島  主だったものはイタリアのリピツァー、パガニーニ、南アフリカのプレトリアで行われるUNISA、エリザベート等でしょうか。
 
-海外のコンクールを受けるきっかけはありましたか?
 
大島  一番初めのきっかけは、友達が海外のコンクールを受けだして、日本とは視点が違うから受けてみるといいかもと薦められたことですね。当時は、日本で、コンクールも受けながら、学校に通っていました。大学1年生で初めて受けましたね、薦められ始めたのは高校生くらいです。
 
-海外コンクールは数多くあると思うのですが、その中で受験するコンクールを選定した理由は何でしょうか?
 
大島  当時は現在のように情報も公開されておらず、コンクールが沢山あるとも知らなかったので、ジュネーブの国際連盟に加盟しているコンクールしか分からなかったのです。
 
-情報収集や準備はどのように行われたのでしょう?
 

大島  一番初めに受けたコンクールに関しては、ジュネーブから資料を取り寄せて、そこにリストアップされていたいくつかのコンクールに資料請求をし、要綱を取り寄せ、というかんじで準備を始めました。自分に適したレパートリーのプログラムを選んだと思います。もちろん日程的なものも関係いたしますし、それに向けてのレッスンを始めて…という流れですね。留学すると、小さなコンクールの要綱が学校にあったりしたのですけれども、日本にいるときは、当時はネットも普及していなかったため、情報収集は大変でした。
 
-情報が少ない中で、参加コンクール選定の一番の決め手は何だったのでしょうか?
 
大島  やはりプログラムでしょうか。当時は準備もそんなに出来ていないし、レパートリーも少ないですし、自分が弾ける範囲の中でと考えますと選択肢は少なくなってきます。
 
-準備期間はどのくらいでしたか?
 
大島  大体半年くらいですね。
 
-コンクールを受けるに当たって不安も多かったと思うのですが、どのように解消されていったのでしょう?
 
大島  練習するしかないみたいな(笑)。楽器から離れていると余計不安になってしまうので。1日の自由の時間は殆ど練習していました。逆にやりすぎてしまって、直前になって疲れてしまったり、腕を壊してしまったり、コントロールできるようになるまで時間がかかりました。
 
-ゴールにピークを合わせていくことが難しいのでしょうか?
 

大島  それにプラスして自分の限界を知らないというか、どれくらいまでで抑えておかなければいけないということが分からなくて。経験を積むことによって分かるようになりましたし、また本番経験を重ねることによって、どのくらい練習すれば本番でどのくらい弾けるか等が計算できるようになりました。
 
-コンクール前に、先生や周りの方からいただいたアドバイスでどんなことが役に立ちましたか?
 
大島  一番役に立ったのは、人と比べて直すのではなく自分の長所を伸ばしなさい、と先生に言われたことです。
 
-日本から海外に渡航する上で、本番を順調に迎えるための秘訣があれば教えていただけますか?
 
大島  日本から受けにいったときは、飛行機に乗るだけで疲れてしまって、なかなか思うように自分の体調を管理できませんでした。周りの方は、1週間前から現地に入って時差ぼけを治したりしていました。ぎりぎりに行くよりは体調管理できていたようです。その方の体力にもよるとも思うのですが。
 
-ちなみに現在のオーケストラでは?
 
大島  オペラなので全く異動がないのです、ツアーもない、ずっとパリにいます。そういった意味ではつまらないですけど楽ではあります。
 
-現地に到着してからの練習環境はいかがでしたか?
 
大島  そのコンクールによってまるっきり違っています。事務局がコンクールの参加者の宿泊先を指定する場合もあるし、自分で手配する場合も、ホームステイの場合もあるので、練習環境が違うのです。ただ、ホテルではどこでも一般のお客様が必ず存在するので、文句が出て全く練習できなかったときもありました。
 
-基本的には宿泊先で練習することが多いのでしょうか?
 

大島  ヴァイオリンは殆どそうですね。ホテルが練習NGの場合は、ウルトラミュートという、金属性の弱音器があるのですけれど、それを付けてなんとかOKというときもあれば、それを付けてもまだうるさいと言われることもあって…どうしても練習が必要だからどこかないだろうかと事務局にかけあって、手配してはいただいたけれど他の皆さんも殺到するので1日1時間しかできないとか、大変でした。そうなると皆さんも同じ条件なので、しかたないと思う部分もありました。
 
-現地に到着してからの練習環境は良くないと考えたほうが?
 
大島  ホームステイの場合は、練習し放題ですし食事も作っていただけたりしますので、宿泊先によりますね。
 
-伴奏者の手配は、いかがされていたのでしょうか?
 
大島  コンクール側がオフィシャルピアニストを用意していますので、自分で連れて行かない人は殆どが頼んでいました。私も大体オフィシャルの方に頼んでいました。
 
-初対面の方とはじめて併せると思うのですが、コミュニケーション等はスムーズにいきましたか?
 
大島  共通語は英語になるのですが、相手が英語を喋れない場合も結構あって。ただ、弾いてしまえばなんとなくは分かるので、お互いに。たまに、本当にこんなピアノでいいのかな…という演奏の方もいました。その時は、自分にだけでなく誰の演奏に対しても同じ対応であれば、皆同じ条件だからしょうがないか、と思いました。
 
-自分で連れて行かれる方は…
 
大島  そういうことを避けるためにつれていくんです(笑)。曲にもよるのですが、私はピアノと併せるのが難しい曲はコンクールではできるだけ選ばないようにしています。レパートリーの選択のポイントになりますね。
 
-日本のコンクールとの審査方法等の違いを感じたことはありますか?
 

大島  海外だと、極めて音楽的な人はどんなに演奏を間違えたり飛んだりしても受かったりすることがありますよね。それはよっぽど飛びぬけていなければ起こることではないのですけれども。あとは、受ける人の心持ちも違うと思いました。日本のコンクールの場合は、そこを目指して一所懸命頑張って受けに行く傾向が多いと思うのですが、向こうでは、気軽に、レッスンの一環で受けるといったフレンドリーな感じの人が沢山いました。気持ちに余裕があるというか、コンクールだけではないというか、期間中でも観光したり心を楽しませたり、余裕を感じる人がいました。コンクール自体を楽しむというか。
 
-審査方法等で違ったなということはありますか?
 
大島  基本は同じだと思います。
 
-実際に受けたあとで、演奏やメンタリティ等に変化はありましたか?
 
大島  沢山受けたからといって、直接的には変わらないと思うのですけれども、受け続けることによって、だいぶ心が強くなる、打たれ強くなるという面はあるかもしれません。
 
-海外コンクールについての印象がかわった等ありましたか?
 
大島  海外のコンクールというのは、弾く時間も長くレパートリーも多いので、聴いてくれているなってかんじは受けます。聴衆も審査員も。
 
-海外コンクールを受けたことで見えてきたものはありますか?
 
大島  厳しさを知ったということでしょうか。世の中・世界にはこれだけ上手な人がいっぱいいて…一流の演奏家として普通に活躍している方が受けに来ていてその演奏を目の当たりにしたり、技術はままならないのにものすごく音楽的な人がいたり、日本の画一的な教育環境のもとでは出会う機会がない方が沢山いるので、様々な演奏を聴けるチャンスでもあります。
 
-忘れられないエピソードはありますか?
 

大島  南アフリカのコンクールの印象がものすごく強くて。日本から行きましたが、とにかく遠いのです。テープ審査があって、それに受かった人が全員招待されます。交通費や宿泊先は全部の費用負担をしていただけて、ホームステイでした。日本大使館の方にもお世話していただいて、国をあげて歓迎してくれている雰囲気をかなり感じました。滞在期間は3週間と長かったので、本選まで行けなかった参加者同士でキャンプにいったりして、とても楽しかった思い出です。町の人との出会い、仲間たちとの出会いがありました。
 
-コンクールを受けたことで、プロ活動に繋がったことは何かありますか?
 
大島  直接的にはないですけれど、経験のひとつとしての履歴になりますし、プラス知り合った人が沢山いることが大きいですね。今でも繋がりがあるので、どこにいってもコンタクトがあるし、例えば知人が入ったオーケストラの情報が得られる等、ネットワークがどんどん拡がっていくかんじです。一番大切なのは人との繋がりですよね。
 
-プロである大島さんに対して失礼な質問かもしれないのですが、今後コンクールを受ける予定はありますか?
 
大島  もうないです(笑)。コンクールによりますが、受験の資格として学生であることや、年齢制限があります。ヴァイオリンは年々年齢制限が下がる傾向にあり、26歳くらいまでのコンクールもあります。その年齢に達してよかった(笑)というかんじですね。受験できる年齢の間は、ここで諦めたらいけないのではないか等プレッシャーがあったのですが、年齢が来て受ける必要がなくなったのでほっとしています(笑)。
 
-コンクールに参加していたほうがプロになれる可能性は高くなるのでしょうか?
 
大島  オーケストラに入るのではれば、コンクール歴はあまり関係ないです。コンクールに参加し続けて年をとってしまうことより、早くオーケストラに入ってプロ活動するほうがヨーロッパでは多いんですね。コンクールをきっかけにプロ活動したいと考えても、ソリストになる相当限られた人しかいないと思うのです。そうなるためには、超有名なコンクールで1位になるしかない、なかなか出きることではないので、コンクール参加を経験として受け止めたほうがいいのではないかなと思います。
 

-これから海外コンクールを受験する方にアドバイスがあれば教えていただけますか?
 
大島  受けに行くだけでとても大変なことだと思うのですけれど、なるべく自分のリズムを崩さないで、周りに惑わされないようにして、自分のできることを最大限に発揮できたらいいなと思います。
 
-本日はお忙しいところ貴重なお話を本当にありがとうございました!
 
 
 

ブログ「パリ・オペラ座からの便り」

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2012年11月30日 ウィーン

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